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シンガー・ソングライターの長渕剛(50)と横綱・朝青龍(26)がこのほど対談した。横浜市内で新アルバムを録音中の長渕を、「9年来のファン」という朝青龍が訪問し、念願の対面が実現。「今あるのは長渕さんの歌のおかげ」と横綱の心の礎になっていることを明かした。歌、相撲、祖国、人生…。異なるジャンルを支える2人が、世代、国を超えて熱く語り合った。
朝青龍は今年の初場所中、長渕出演のショーを東京ドームで観劇。来訪をたまたま本紙記事で知った長渕は「会いたい」と横綱が熱望していることを聞き、録音スタジオに招待した。
朝青龍(以下、朝)「初めて長渕さんの曲『とんぼ』を聴いたのは1999年ごろ。ものすごいパワーがでてきました」
長渕(以下、長)「ぼくの曲を聴いてくれるのは、勝負の世界に身を置く人が多い。勝負師って、強くなる過程で弱さが嫌になっていく。ぼくも自分の強さと弱い部分を歌ってきた。だから共感してもらえるんだと思う」
長渕も横綱との対面を願っていた。朝青龍によって角界に変化が起きていることを感じていたからだ。
長「日本の国技でありながら、みんな見なくなった時期があったけど、横綱が出てきてまた注目したよね。久しぶりに現れたヒーローだと思った。日本人力士がふがいないと言われるのは、目指すヒーローがいなかったから。やっと若い力士の目標が現れたということ」
朝青龍は初場所で、史上5人目、20回目の優勝を達成。場所中、繰り返し聴いた曲がある。映画「男たちの大和/YAMATO」の主題歌として使われ、戦地で散った日本兵の家族や恋人の心情を歌った「CLOSE YOUR EYES」(05年)だ。
朝「カラオケで2、3回歌いました。最近、愛国心を感じることが少なく、思い出すきっかけにもなりました」
長「モンゴルから来て日本の国技を伝えていることに深い意味がある。ぼくらは、横綱が愛するモンゴルの『血』をテレビを通して感じ取っている。人間の一番大事な、祖国の血の尊さを教わっているんだ」
長渕は、横綱が抱える孤独感にも共感を覚えるという。長渕の楽曲制作も生みの苦しみの伴う、孤独な作業だ。
朝「昨年の九州場所は逆転優勝でした。場所中ずっと『とんぼ』を聴いて、自分を奮い立たせ、奇跡が起きた。優勝を決めた取組後(安どして)ハイヤーの中でひとり泣きました。家族がいても、土俵ではひとり。重圧は自分にしか分からない」
長「勝負は紙一重の世界。人間の弱さを救ってくれるのが祖国の血であり歌や言葉の力。ただ、言葉は人を傷つけ、殺すこともある」
朝「そうです。努力して勝っても、何だかんだ書かれる。言いたい。オレを倒せるヤツがいるなら出てこい!と」
アルバムでは「JEEP」(95年)と「YAMATO」(05年)を好んで聴いている。
朝「長渕さんの曲は、寂しい時に肩を組んでくれる友達のよう。日本語の勉強にもなった。ぼくはリラックスする時でなく、集中力をグーっと高める時に聴くんです」
長「横綱の強さの原動力は、絶対に勝つ、という一念。いまの日本人にないハングリーさ。ぼくも含め、見習うべきだと思う」
朝「考えるんです。丸1年けいこしてきて、(取組は)たった何秒。勝たなきゃ意味ないじゃないか。ぼくが人より何が上かと言ったら、気持ちの強さ。自分に勝たなきゃ、相手に勝てるわけない」
長「横綱は命を懸けているんだよ。頂点に立てるかどうかはその意識があるかないか。本当はどんな仕事をしていても誰もが命を懸けなければいけない」
朝青龍は録音作業も見学。ギタリストに「準備OK?」と声をかけ、スタジオを笑いに包んだ。200キロのベンチプレスを上げた携帯画像を長渕に見せ、子供のようにはしゃぐ光景もあった。
長「このちゃめっ気がすてきだよ。お相撲さんって、しゃべらないし、しゃべってはいけないイメージがあった。横綱がそれを変えた。鬼気迫る形相と、両面あるから素晴らしい。新しい力士像を作ったよね」
朝青龍は東京ドームのショーが長渕の生歌初体験。新曲「太陽の船」から大きなパワーを感じ、それを受け止めようと、無意識に両手を開いた。
長「イントロは大地からゆっくり太陽が昇るイメージ。横綱の故郷と相通じるのかな。モンゴルに行きたくなったな。草原でギターを持って歌ったら気持ちいいだろうね。横綱が声をかけてくれたら、たくさん観客が集まるんじゃないかな」
朝「長渕さんの歌はモンゴルに合いますよ。ぼくはモンゴルの宣伝係。友人に長渕さん(の歌)を聴かせたらみんな好きになっちゃった。来てほしいです」
長渕は初めての相撲観戦と、朝げいこの見学を約束。横綱も秋に予定されているコンサートツアーを心待ちにしている。活動ジャンルも国籍も異なる。24歳の年齢差も超え、2人の間に固い友情が生まれた。
◆朝青龍 明徳(あさしょうりゅう・あきのり)本名ドルゴルスレン・ダグワドルジ。1980年9月27日、モンゴル・ウランバートル市生まれ。26歳。高砂部屋。97年来日し、高知・明徳義塾高に相撲留学。99年初場所、初土俵。02年九州場所で初優勝。03年春場所で史上最速の所要25場所で横綱昇進。今年の初場所で史上最速の20回目の優勝。家族は妻と1男1女。
◆長渕 剛(ながぶち・つよし) 1956年9月7日、鹿児島県生まれ。50歳。78年「巡恋歌」でデビュー。「乾杯」「とんぼ」などミリオンセラー多数。2004年に桜島で7万5000人を集めオールナイトコンサートを開催。オリックス・清原和博、F1の佐藤琢磨、ボクシング元世界王者の戸高秀樹氏、新極真空手の緑健児代表、新保智師範らとも交流がある。
(2007年2月16日06時00分 スポーツ報知)
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