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撮影の際に古式捕鯨発祥の地、和歌山県太地町でイルカ漁を隠し撮りし波紋を呼んだ米映画「ザ・コーヴ」(ルイ・シホヨス監督)が第82回アカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞を7日(日本時間8日)、受賞した。映画の配給元は、今夏の日本上映に向け、立ち入り禁止地域での盗撮など一方的な表現部分を修正するよう製作会社に要請していることが分かった。東京都、大阪府、和歌山県など約20~30館での公開を予定しているというが、太地町では反発の声が広がっている。
「ザ・コーヴ」は「誰も知らなかった衝撃のイルカ“猟”の実態を描く」というドキュメント作品。ルイ・シホヨス監督は「今回の受賞は大いに助かる。(日本での公開の)問題を解決する上での担保になる」と受賞を喜んでいるが、次のような問題点も指摘されている。
〈1〉撮影方法 製作スタッフが無断で太地町内の立ち入り禁止区域に侵入し、模型の岩の内部に隠したカメラで撮影。漁師が鉄の棒で次々と突き、海面が真っ赤に染まった場面を映し出している。地元住民が撮影中止を求めるプラカードを持って抗議する場面なども撮影されている。「鯨肉として偽装販売している」「イルカの肉には大量の水銀が含まれている」との表現もある。
〈2〉地元住民の反応 和歌山県太地町は古式捕鯨発祥地として知られている。地元住民は映画の製作中も撮影を拒否していたため、顔をスクリーンに映されたのは名誉棄損と肖像権の侵害と主張。「商品偽装、水銀汚染の事実はない」と反論している。昨秋に東京国際映画祭で上映された際も事前に上映中止を申し入れたが、「表現の自由」を理由に拒否された。
〈3〉演出 同映画は各国で数多くの映画賞を受賞している。「人間とイルカの接点」をテーマに取材を続けてきたジャーナリストの坂野正人さんは「映画は単にイルカ漁に反対するだけでなく、イルカ肉の危険性や国際捕鯨委員会(IWC)の在り方なども問題提起している」と指摘。米メディアでも「007やアクション映画のようなドラマチックな展開とサスペンス」「現実のスパイスリラー」と娯楽性、演出などを評価する声がある。
〈4〉日本上映は… 国内配給元「アンプラグド」(加藤武史代表)によると、今夏にも東京、大阪、和歌山など20~30館で公開予定という。ただ、日本上映には“ボカシ”が必要と判断。盗撮部分や漁師の顔が撮影された50~60か所には修整を加え、作品の最後に示されているイルカの体内水銀濃度のデータについては「すべてのイルカに当てはまる数値ではない」との注釈を入れることを製作側に打診している。08年に公開されたドキュメンタリー映画「靖国 YASUKUNI」は終戦記念日の靖国神社の情景を描いたが、右翼団体の抗議などで上映を中止する映画館が続出。表現の自由について議論を呼んだことがある。「ザ・コーヴ」も日本上映の際には波紋が広がりそうだ。
(2010年3月9日06時01分 スポーツ報知)
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