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高校野球が終わると、夏も終わりですね。それにしても、決勝戦で惜しくも敗れた日本文理の追い上げはすばらしかった。実を言うと、試合中盤に大差がついた時点でテレビを見るのをやめてしまい、夜になって後悔した次第。なんでも早々とわかったつもりになるのは悪い癖です。
最後まで本気であきらめない姿勢は、とてもすがすがしかった。大人になると、いろんなシガラミもあって難しいもんだよな…と思って見回してみるといました、あきらめていない人が。四国・九州アイランドリーグ(IL)の高知に所属する伊代野貴照投手。同じくチームメートの前阪神・伊良部秀輝の入団のきっかけを作ったという右腕に、今年7月に四国・九州IL選抜の一員として福岡に遠征していた際、偶然に再会した。
昨年オフ、6年間在籍した阪神から戦力外通告を受けてからの行く末を知らず、驚いた私に「やっぱりもう一度、プロ野球で勝負したいんですよ。不完全燃焼だったんで」と真剣な表情で言った。今年3月に台湾プロ野球の兄弟エレファンツに入団したが、思うような成績が残せずに解雇され、独立リーグにたどり着いていた。
2月にこのコラムでも書いたが、プロ野球界に身を置く中で、今季限りで現役引退を決めた中日・立浪和義選手のように人生の引き際を自ら決められるのは限られた一部のスター選手だけ。そのひと握りに漏れた大多数の選手が、同じような思いを抱えながらも、どこかであきらめ、自分自身に踏ん切りをつけて次の人生を歩んでいく。
少し前のことになるが、自宅近くで懐かしい顔を見かけた。細身の体にスーツをきっちり着こなし、ビジネスバッグを手に早足で最寄り駅へと急いでいた。地元では珍しい元プロ野球選手。といっても、1軍での実績はほとんどない。出身中学が同じということで勝手に親近感を持っていたが、プロ野球選手の面影はどこにもなく、まじめな若いサラリーマンという雰囲気だった。
伊良部にしても伊代野にしても、胸にくすぶる思いに対して正直に、好きな野球の道で再び夢を追うことを選んだ。もう一度、頂点を目指すことがいかに難しいか、2人ともプロの世界を肌で感じているだけに分かっているはず。いや、分かっているからこそ、もう1度あの高みを目指したいのかもしれない。
「あきらめが悪いでしょう、僕。でも、今できるうちに悪あがきしてみます。もうちょっと野球がうまかったらなあ」
そう言って自虐的に笑う伊代野に、励ましの一言をうまくかけられなかった。「頑張って」なんて、たやすく言うのは失礼な気がした。どの道を選ぶのが正解か、幸せかなんて誰にも分からない。ただ、自分で選択した人生の先に、光があると信じて歩いていくしかないのだ。私がこの仕事を始めて14年。なんとなくいろんなことをわかったような気分になり「無理なものは無理」と見切りも早くなってしまった。今この時に、後先を考えず思い切りじたばたする姿を、少しまぶしく感じている。
(2009年8月30日18時42分 スポーツ報知)
96年入社。大阪府出身。運動部ひと筋で、巨人、阪神の両人気球団の担当経験がある社内でも希少な存在。オリックス、アマ野球担当も歴任し、今年は遊軍。原稿執筆の早さはデスクの折り紙つき。